大学入学共通テスト(国語) 過去問
令和4年度(2022年度)追・再試験
問29 (第4問(漢文) 問2)

このページは閲覧用ページです。
履歴を残すには、 「新しく出題する(ここをクリック)」 をご利用ください。

問題

大学入学共通テスト(国語)試験 令和4年度(2022年度)追・再試験 問29(第4問(漢文) 問2) (訂正依頼・報告はこちら)

唐の王宮の中に雉(きじ)が集まってくるという事件が何度も続き、皇帝である太宗(たいそう)は何かの前触れではないかと怪しんで、臣下に意見を求めた。以下は、この時に臣下の褚遂良(ちょすいりょう)が出した意見と太宗の反応とに対する批評である。これを読んで、後の問いに答えよ。なお、設問の都合で本文を改め、返り点・送り仮名を省いたところがある。

(注1)秦文公 ―― 春秋時代の諸侯の一人で、秦の統治者。
(注2)陳倉 ―― 地名。現在の陝西(せんせい)省にあった。
(注3)南陽 ―― 地名。現在の河南省と湖北省の境界あたりにあった。
(注4)陛下本封秦 ―― 太宗は即位以前、秦王の位を与えられていた。唐の長安も春秋時代の秦の領地に含まれる。
(注5)上 ―― 太宗。
(注6)陳宝 ―― 童子が変身した雉を指す。
(注7)猶得白魚便自比武王 ―― 周の武王が船で川を渡っていると、白い魚が船中に飛び込んできた故事を踏まえる。その後、武王は殷(いん)を滅ぼして周王朝を開き、白魚は吉兆とされた。
(注8)諂妄 ―― こびへつらうこと。
(注9)愚瞽 ―― 判断を誤らせる。
(注10)史 ―― 史官。歴史書編集を担当する役人。
(注11)魏徴 ―― 太宗の臣下。
(注12)高宗鼎耳之祥 ―― 殷の高宗の祭りの時、鼎(かなえ)(三本足の器)の取っ手に雉がとまって鳴き、これを異変と考えた臣下が王をいさめた故事。後に見える「鼎雊」もこれと同じ。「雊」は雉が鳴くこと。

波線部イ「善」のここでの意味として最も適当なものを、次の選択肢のうちから一つ選べ。

イ  「善」
問題文の画像
  • 崇拝する
  • 称賛する
  • 整える
  • 得意とする
  • 親友になる

次の問題へ

正解!素晴らしいです

残念...

この過去問の解説 (3件)

01

波線部イの前後を書き下し文にして見ると、

「しかるに太宗之を善、史も譏らず」となります。

注釈も合わせると、

「しかし太宗はこれを善とし、役人もそれについて非難しなかった」という意味になると考えられます。

よって太宗と役人は同じようなことをしたことが分かり、

「善」には行いを肯定する意味があると推測できます。

以上のことを踏まえて各選択肢を検討していきます。

選択肢1. 崇拝する

非難しなかったという対応に比べて「崇拝する」は過剰な表現です。

よって不適です。

選択肢2. 称賛する

「行いを肯定する」という意味に近いです。

よって適切です。

選択肢3. 整える

「整える」は「行いを肯定する」という意味とは異なります。

よって不適です。

選択肢4. 得意とする

「得意とする」は「行いを肯定する」という意味とは異なります。

よって不適です。

選択肢5. 親友になる

「親友になる」は「行いを肯定する」という意味とは異なります。

よって不適です。

まとめ

後の文に「史も」と同調するような表現があったため同じような意味であると推測できる問題でした。

漢字自体の意味が分からなくても、

近くにある文章から推測しましょう。

参考になった数0

02

「善」は「ぜん」または「善し=よし」と読みます。

・道徳や道理にかなったこと。善行。
・好ましいこと。すぐれていること。

という意味があります。

 

これを踏まえて、(イ)を含む前後の内容の意味を取ってみると、
「太宗はこれ(雉を吉兆ととらえたこと)を  、史官も譏らなかった」
となります。

「譏る=そしる」は「悪く言う」「けなす」という意味です。
「史官も悪く言わなかった」とあるので、
「善」の部分には、肯定的なニュアンスのことばが入ると考えられます。

「善」に当てはめて、意味が自然に通るものを選びましょう。

 

選択肢1. 崇拝する

×崇拝する
→肯定的ですが、「悪く言わない」と並べるには過剰な表現です。

この選択肢は誤りです。


自信がなければ、いったん保留にして別の選択肢を検討しましょう。

 

選択肢2. 称賛する

〇称賛する
→肯定的な表現です。


この選択肢が正解です。

 

選択肢3. 整える

×整える
→肯定する、というニュアンスではないため、この選択肢は誤りです。

選択肢4. 得意とする

×得意とする
→肯定する、というニュアンスではないため、この選択肢は誤りです。

選択肢5. 親友になる

×親友になる
→肯定する、というニュアンスではないため、この選択肢は誤りです。

まとめ

適切な選択肢を検討するときは、前後の内容と照らし合わせて自然に意味が通るかを考えましょう。
言い過ぎ、または不十分な表現を選んでしまわないよう、注意が必要です。
 

参考になった数0

03

「善」は、「ぜん」または送り仮名をともなって「善し(よし)」と読み、「道理や道徳にかなっている。好ましい。優れている。」という意味をもちます。

 

波線部イの前後を、注を参考に現代語訳してみましょう。

太宗はこれを「善」、史官も譏らなかった。

「譏る(そしる)」は、非難するという意味なので、後半部分は、「史官も非難しなかった」となります。

「史官」とあることから、太宗も同様であったとわかります。

 

このことから、「善」は肯定し受け入れるという意味を含むものであると推測できます。

選択肢1. 崇拝する

「崇拝する」は否定の意味は含みませんが、「肯定し受け入れる」よりも過剰な表現であるため、誤りです。

選択肢2. 称賛する

「肯定し受け入れる」という意味に合致するため、これが最も適当な選択肢です。

選択肢3. 整える

「整える」は、「肯定し受け入れる」という意味を含まないため、誤りです。

選択肢4. 得意とする

「得意とする」は、「肯定し受け入れる」という意味を含まないため、誤りです。

選択肢5. 親友になる

「親友になる」は、「肯定し受け入れる」という意味を含まないため、誤りです。

まとめ

「善」は現代でも使われる言葉ですが、古典では道徳的な「良い」だけでなく、広く「良い」という意味で使われます。

 

また、選択肢を該当部分に当てはめて、前後の文脈で判断することもあわせて行うと、より確実です。

 

この問題では送り仮名の「も」がポイントでした。

漢文でも助詞・助動詞は読解の手がかりになるので、注意して読んでみましょう。

参考になった数0