大学入学共通テスト(国語) 過去問
令和4年度(2022年度)追・再試験
問33 (第4問(漢文) 問6)

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問題

大学入学共通テスト(国語)試験 令和4年度(2022年度)追・再試験 問33(第4問(漢文) 問6) (訂正依頼・報告はこちら)

唐の王宮の中に雉(きじ)が集まってくるという事件が何度も続き、皇帝である太宗(たいそう)は何かの前触れではないかと怪しんで、臣下に意見を求めた。以下は、この時に臣下の褚遂良(ちょすいりょう)が出した意見と太宗の反応とに対する批評である。これを読んで、後の問いに答えよ。なお、設問の都合で本文を改め、返り点・送り仮名を省いたところがある。

(注1)秦文公 ―― 春秋時代の諸侯の一人で、秦の統治者。
(注2)陳倉 ―― 地名。現在の陝西(せんせい)省にあった。
(注3)南陽 ―― 地名。現在の河南省と湖北省の境界あたりにあった。
(注4)陛下本封秦 ―― 太宗は即位以前、秦王の位を与えられていた。唐の長安も春秋時代の秦の領地に含まれる。
(注5)上 ―― 太宗。
(注6)陳宝 ―― 童子が変身した雉を指す。
(注7)猶得白魚便自比武王 ―― 周の武王が船で川を渡っていると、白い魚が船中に飛び込んできた故事を踏まえる。その後、武王は殷(いん)を滅ぼして周王朝を開き、白魚は吉兆とされた。
(注8)諂妄 ―― こびへつらうこと。
(注9)愚瞽 ―― 判断を誤らせる。
(注10)史 ―― 史官。歴史書編集を担当する役人。
(注11)魏徴 ―― 太宗の臣下。
(注12)高宗鼎耳之祥 ―― 殷の高宗の祭りの時、鼎(かなえ)(三本足の器)の取っ手に雉がとまって鳴き、これを異変と考えた臣下が王をいさめた故事。後に見える「鼎雊」もこれと同じ。「雊」は雉が鳴くこと。

傍線部D「使魏徴在、必以高宗鼎耳之祥諫也」とあるが、【資料】は、魏徴が世を去ったときに太宗が彼を悼んで述べた言葉である。これを読んで、後の問いに答えよ。

波線部「得失」のここでの意味として最も適当なものを、次の選択肢のうちから一つ選べ。
問題文の画像
  • 人の長所と短所
  • 自国と他国の優劣
  • 臣下たちの人望の有無
  • 過去の王朝の成功と失敗
  • 衣装選びの当否

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この過去問の解説 (3件)

01

波線部の前の文章は「銅を鏡にすれば、衣冠を正すことができる」、

「古を鏡にすれば、盛衰を知ることができる」となっており同じような構造になっています。

そのため波線部も同じように「人を鏡にすれば、得失を明らかにすることができる」となります。

またその後の文章で、

「魏徴が亡くなり、遂に一つの鏡を失う」とあることと【褚遂良が出した違憲と太宗の反応とに対する批評】から、

皇帝にはっきり意見できる魏徴を鏡にすることで明らかにすることができるのが得失であることが分かります。

以上のことを踏まえて各選択肢を検討していきます。

選択肢1. 人の長所と短所

人を鏡にすることで分かることとして適切です。

「得失」の意味にも近いです。

よって適切です。

選択肢2. 自国と他国の優劣

人を鏡にすることで分かることではなさそうです。

よって不適です。

選択肢3. 臣下たちの人望の有無

「皇帝にはっきり意見できる魏徴」を鏡にすることでしか分からない内容であるとは考えにくいです。

よって不適です。

選択肢4. 過去の王朝の成功と失敗

人を鏡にすることで分かることではなさそうです。

すでに述べられた「古を鏡にすれば」と内容が被っているようにも感じます。

よって不適です。

選択肢5. 衣装選びの当否

人を鏡にすることで分かることではなさそうです。

すでに述べられた「衣冠を正す」と内容が被っているようにも感じます。

よって不適です。

まとめ

同じような文章の連続であることに気づくと、

意味を読み取りやすいです。

【資料】と【褚遂良が出した違憲と太宗の反応とに対する批評】の内容を合わせて理解することが重要です。

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02

得失」とは、「成功と失敗」「利害」といった意味をもつことばです。

 

【資料】の内容を把握していきましょう。


波線部より前は、「〇〇を鏡にすると、◆◆ができる」と繰り返されています。

それぞれ、

 

・銅を鏡にすれば、衣冠を正す(=身なりを整える)ことができる
・古(=過去)を鏡にすれば、盛衰を知ることができる
・人を鏡にすれば、「得失」を明らかにすることができる

 

という内容です。

これを踏まえて本文の内容と照合しましょう。

 

本文では、臣下について、
・遂良→雉が王宮に来ることを「吉兆」とした
・魏徴→雉が王宮に来ることを「災異」とした
との記述があります。


遂良の意見は王にこびへつらったもので、判断を誤らせるものだったと書かれておりあまり良い捉え方をされていません。

また資料では、末尾に、「魏徴が亡くなり、ついに鏡をひとつ失った」とあり、
魏徴の意見は(遂良の意見とちがって)王にこびることなく述べたものと評価されていたことが分かります。

 

以上より、
【資料】

「得失」→媚びることなく出された臣下の意見を参考にすると明らかになるもの


と解釈できます。

 

それでは選択肢の検討に移りましょう。
 

選択肢1. 人の長所と短所

長所と短所は、人を鏡とする(自分だけでは判断できず、人のことを参考にする)ことによって明らかになるものとして適切です。
この選択肢が正解です。

選択肢2. 自国と他国の優劣

×

国の優劣については、臣下の意見を参考にして明らかになるものではありません。
この選択肢は誤りです。

選択肢3. 臣下たちの人望の有無

×

臣下たちから見た王に対しての人望なのか、臣下自身の人望なのかが明らかではありません。
また本文の内容とも合致しないため、この選択肢は誤りです。

選択肢4. 過去の王朝の成功と失敗

×

「過去の王朝の成功と失敗」は人ではなく「古」を鏡としたときに分かることです。
この選択肢は誤りです。

選択肢5. 衣装選びの当否

×

「衣装選び」は人ではなく「銅」を鏡としたときに分かることです。
この選択肢は誤りです。
 

まとめ

本文の内容を正確に読み取り、選択肢を検討しましょう。
 

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03

【資料】の構成を見てみると、「〜を鏡とすると、〜」の形式を3回繰り返していることがわかります。

それぞれの内容を整理します。

 

銅を鏡とすれば、衣服や冠を整えられ、

昔を鏡とすれば、盛衰を知ることができ、

人を鏡とすれば、「得失」を明らかにすることができる。

 

2つ目の内容から、「鏡とする」という表現には「参考にする」という意味が含まれているとわかります。

つまり、「得失」は、人を参考にすると明らかにできるものであるとわかります。

人の何を参考にするのか、より具体的に考えてみます。

 

本文の内容を見てみると、「雉が集まってくるという事件」を「吉兆」と捉えた「遂良」と「異変」と捉えた「魏徴」を取り上げ、臣下から王への意見のあり方を対比しています。

注8、注9 の「こびへつらうこと。」「判断を誤らせる。」から、「遂良」の意見は王へ「こびへつら」い、王の「判断を誤らせる」ものだとしています。

一方、【資料】の最後の1文に、「魏徴」が亡くなったことで、鏡の一つを失うこととなった、とあることから、王にとって「魏徴」の意見は参考にするべき鏡のようなものであったとわかります。

 

これらのことから、「人」は、王にこびへつらうことなく意見できる臣下である「魏徴」を指しており、「得失」は、王に対する臣下の意見を参考にすると明らかにできるものであるとわかります。

 

このことをふまえて選択肢を見てみましょう。

選択肢1. 人の長所と短所

「人」を「王」だとすると、「人(王)の長所と短所」は、「王に対する臣下の意見を参考にすると明らかにできるもの」として合致するため、この選択肢が最も適当なものです。

選択肢2. 自国と他国の優劣

国の優劣は「王に対する臣下の意見を参考にすると明らかにできるもの」に合致しないため、誤りです。

選択肢3. 臣下たちの人望の有無

本文では、王に対する「臣下たちの人望」にも、他者からの「臣下たち」へ「の人望」にも触れていないことから、「王に対する臣下の意見を参考にすると明らかにできるもの」に合致しないため、誤りです。

選択肢4. 過去の王朝の成功と失敗

「過去の王朝」の盛衰についてわかるのは、「古」を鏡としたときであるため、誤りです。

選択肢5. 衣装選びの当否

「衣装」についてわかるのは「銅」を鏡としたときであるため、誤りです。

まとめ

「臣下」という語句が入っている点に惑わされて、誤った選択肢を選ばないよう注意しましょう。

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