大学入学共通テスト(国語) 過去問
令和6年度(2024年度)追・再試験
問37 (第4問(漢文) 問8)

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問題

大学入学共通テスト(国語)試験 令和6年度(2024年度)追・再試験 問37(第4問(漢文) 問8) (訂正依頼・報告はこちら)

次の文章は、明代末期から清代初期の思想家である賀貽孫(がいそん)が著したものである。これを読んで、後の問いに答えよ。なお、設問の都合で返り点・送り仮名を省いたところがある。

傍線部Dの解釈として最も適当なものを、次のうちから一つ選べ。
問題文の画像
  • 禿翁は大魚ではなく、竜であったがゆえに、世の人々は禿翁に危害を加えずにはいられなかった。
  • 禿翁が大魚ではなく、竜であったならば、世の人々は禿翁に危害を加えることはできなかったはずだ。
  • 禿翁が大魚であって、竜ではなかったならば、世の人々は禿翁を受け入れて危害を加えなかったはずだ。
  • 禿翁は大魚でも竜でもなかったがゆえに、世の人々は憚(はばか)ることなく禿翁に危害を加えることができた。
  • 禿翁が大魚ではなく、竜であったとしても、世の人々は禿翁を受け入れることなく危害を加えたはずだ。

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この過去問の解説 (2件)

01

傍線部D「使禿翁不為魚而為竜、世人安得て而禍之也哉。

書き下し文:禿翁をして魚と為らしめずして、竜と為らしめば、世の人安くんぞ得てこれに禍ひせんや。

現代語訳:禿翁を魚のままにさせず、竜にさせてしまったなら、世の人々はどうして彼に災いを加えることができただろうか。

 

ポイントは「魚ではなく、竜であったら世の人々はどのような反応をするのか」ということです。

当然、竜相手に危害を加えようとはしないことが分かるので、同じ内容の選択肢を選びましょう。

選択肢1. 禿翁は大魚ではなく、竜であったがゆえに、世の人々は禿翁に危害を加えずにはいられなかった。

文中は「もし竜であったならば、害を加えられなかった(=加えることができなかった)」という仮定+反語です。
しかし①は「竜であったからこそ、危害を加えた」と逆の意味にしています。

「加えずにはいられなかった」=「むしろ加えた」なので、原文と真逆です。

 

したがって、この選択肢は誤りです。

選択肢2. 禿翁が大魚ではなく、竜であったならば、世の人々は禿翁に危害を加えることはできなかったはずだ。

原文の「安くんぞ得て禍ひせんや」=「どうして害を加えられようか(いや、できない)」
つまり「もし竜であったならば、害を加えることはできなかった」という仮定反語の内容と完全に一致します。

文の筋(仮定条件+反語)を正確にとらえています。

 

したがって、この選択肢は正しいです。

選択肢3. 禿翁が大魚であって、竜ではなかったならば、世の人々は禿翁を受け入れて危害を加えなかったはずだ。

原文は「魚ではなく竜であれば、害を加えられなかった」と述べており、「魚であれば加えなかった」とするのは条件が逆です。

「魚」は凡人で、禿翁が魚のままだったからこそ、世の人々に害された(=理解されなかった)という流れになっています。

 

したがって、この選択肢は誤りです。

選択肢4. 禿翁は大魚でも竜でもなかったがゆえに、世の人々は憚(はばか)ることなく禿翁に危害を加えることができた。

たしかに禿翁は「真の竜(聖賢)」ではなく、「豪傑止まり」であったため、世俗に害された(=批判された)という構造は全体の文脈と合います。
ただし、この文自体は「もし竜であれば害されなかった」という仮定を述べており、「実際そうだった」と断定するのは本文の仮定の文意から外れています

 

したがって、この選択肢は誤りです。

 

選択肢5. 禿翁が大魚ではなく、竜であったとしても、世の人々は禿翁を受け入れることなく危害を加えたはずだ。

原文の主張と完全に逆です。
「竜であれば、人は害を加えなかった」とあるのに、⑤は「竜でも害を加えた」と言っているため、意味が真反対になっています。

 

したがって、この選択肢は誤りです。

まとめ

この問題も、現代語訳と文意の読解が鍵でした。

そのためには、「使」と「」の文法表現の理解が必須です。

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02

まず前半の「使禿翁不為魚而為竜」(禿翁をして魚ならず竜たらしめば)の意味から考えていきましょう。

 

使役の構文「~をして○○しむ」および、「使」に「使メバ」と仮定形の送り仮名が振られていることから、「禿翁が魚ではなく竜であったなら」という訳になることが分かります。この時点で自動的に正しい選択肢が絞り込まれます。

 

念のため後半の「世人安得而禍之也哉」(世人いづくんぞ得て之に禍いせんや)についても確認すると、「世の人々はどうして禿翁に危害を加えることができただろうか。いや、できない(=危害を加えることはできなかったはずだ」といった意味になります。

選択肢1. 禿翁は大魚ではなく、竜であったがゆえに、世の人々は禿翁に危害を加えずにはいられなかった。

前半の仮定文の主旨である「禿翁が竜であったならば」が正しく反映されていないため、誤りです。

また、後半の「危害を加えずにはいられなかった」に関しても誤訳となっています。

 

選択肢2. 禿翁が大魚ではなく、竜であったならば、世の人々は禿翁に危害を加えることはできなかったはずだ。

前半の仮定文の訳、後半の解釈ともに正しいこの選択肢が正解です。

選択肢3. 禿翁が大魚であって、竜ではなかったならば、世の人々は禿翁を受け入れて危害を加えなかったはずだ。

前半の仮定文の主旨である「禿翁が竜であったならば」が正しく反映されていないため、誤りです。

 

また、後半の「」は可能の助動詞として使われているものであるため、「受け入れる」という意味はありません。

 

選択肢4. 禿翁は大魚でも竜でもなかったがゆえに、世の人々は憚(はばか)ることなく禿翁に危害を加えることができた。

前半の仮定文の主旨である「禿翁が竜であったならば」が正しく反映されていないため、誤りです。

また、「危害を加えることができた」に関しても誤訳となっています。

選択肢5. 禿翁が大魚ではなく、竜であったとしても、世の人々は禿翁を受け入れることなく危害を加えたはずだ。

前半の仮定文の主旨である「禿翁が竜であったならば」が正しく反映されていないため、誤りです。

また、「禿翁を受け入れることなく危害を加えたはずだ」に関しても誤訳となっています。

まとめ

前半の「使禿翁不為魚而為竜」に使われている使役の構文「~をして○○しむ」および、「使」の後ろの「メバ」という仮定形の送り仮名に注目することで自動的に正解を絞り込むことができますが、念のため後半にもきちんと目を通すようにしましょう。

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