大学入学共通テスト(国語) 過去問
令和7年度(2025年度)本試験
問23 (第4問(古文) 問1)

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問題

大学入学共通テスト(国語)試験 令和7年度(2025年度)本試験 問23(第4問(古文) 問1) (訂正依頼・報告はこちら)

次の文章は、いずれも物語の一節で、【文章Ⅰ】は『在明(ありあけ)の別(わかれ)』、【文章Ⅱ】は『源氏物語』若菜下の巻である。これらを読んで、後の問いに答えよ。

【文章Ⅰ】
右大臣の娘である大君(おおいぎみ)は、夫である左大臣の子を妊娠している。一方、右大臣の妹である女君は、かつて契りを交わした左大臣との関係が途絶え、苦悩を深めていた。そのころ、大君が病になり命が危うくなったため、僧が呼ばれて祈禱(きとう)をすることになった。

 (注1)山の座主(ざす)、慌て参りたまへり。御枕上に呼び入れきこえて、右の大臣(おとど)、御手をすりて、仏にもの申すやうに、「ただ、いまひとたび、目を見合はせたまへ。あまたはべる中に、何の契りにか、(ア)いはけなくよりたぐひなく思ひそめはべりにし(注2)闇を、さらに(注3)晴るけはべらぬ」と、泣きまどひたまふに、いと静かに数珠(ずず)押し揉(も)みたまひて、「令百由旬内(りゃうひゃくゆじゅんない)、無諸衰患(むしょすいぐゑん)」と読みaたまへる御声、はるかに澄みのぼる心地するに、変はりゆく御けしき、いささか直りて、目をわづかに見開(あ)けたまへり。あるかぎり、(イ)なかなか(注5)手まどひをして、「誦経(ずきゃう)よ、何よ」とまどひたまふに、なほ心ある人とも見えず、御かたちも変はりたるやうにて、その人とも見えたまはず。いとにほひやかにけ近きものから、妬(ねた)げなるまみのけしき、左の大臣はさやうにも分(わ)きたまはず、父殿ぞ、いとあやしう、「思ひかけぬ人にも似たまへるかな」と心得ず思(おぼ)さるるに、うちみじろきて、
 さまざまに朝夕こがす胸のうちをいづれのかたにしばし晴るけむ
とのたまふけはひ、いささかその人にもあらず、違(たが)ふべくもあらぬを、父大臣のみぞ、かへすがへす「あやし」と傾(かたぶ)かれたまふ。
 さて、わが御心おはせねば、また消え入りつつ、さらにとまるべくもおはせぬを、「今はけしうbおはせじ」とおし静めつつ、いたく嗄(か)れたる御声やめて、薬師(やくし)の呪(ず)をかへすがへす読みたまふに、御もののけ現れ出(い)でて、小さき童(わらは)に(注7)駆り移されぬ。
 (ウ)呼ばひののしる声に、今ぞ御心出で来るにや、人々のまもりcきこゆるを、「はしたなし」と思して御衣(ぞ)を引きふたぎたまふ。

(注1)山の座主 ――― 比叡山延暦寺(ひえいざんえんりゃくじ)の最高位にある僧。
(注2)闇 ――― 子を思うあまりに分別を失う親心のたとえ。「人の親の心は闇にあらねども子を思ふ道にまどひぬるかな」(『後撰(ごせん)和歌集』)による。
(注3)晴るけ ――― 下二段活用動詞「晴るく」の連用形。
(注4)令百由旬内、無諸衰患 ――― 『法華経(ほけきょう)』の一節。周囲から衰えや患いをなくすという内容。
(注5)手まどひ ――― 慌てふためく様子。
(注6)薬師の呪 ――― 薬師如来の力によって病気を治す呪文。
(注7)駆り移されぬ ――― 「駆り移す」は、もののけを病人から離して他の人に乗り移らせること。

【文章Ⅱ】
光源氏(本文では「院」)は、病になり生死の境をさまよう妻を救おうとしている。その病には、かつての光源氏の恋人であり、今は亡き女性が関わっていた。

 院も、「ただ、いまひとたび、目を見合はせたまへ。いとあへなく限りなりつらむほどをだにえ見ずなりにけることの悔しく悲しきを」と思しまどへるさま、とまりたまふべきにもあらぬを見たてまつる心地ども、ただ推しはかるべし。いみじき御心のうちを仏も見たてまつりたまふにや、月ごろさらに現れ出で来(こ)ぬもののけ、小さき童に移りて呼ばひののしるほどに、やうやう生き出でたまふに、うれしくもゆゆしくも思し騒がる。
 いみじく(注8)調(てう)ぜられて、「人はみな去りね。院一(ひと)ところの御耳に聞こえむ。おのれを、月ごろ、調じわびさせたまふが情けなくつらければ、同じくは思し知らせむと思ひつれど、さすがに命もたふまじく身をくだきて思しまどふを見たてまつれば、今こそかくいみじき身を受けたれ、いにしへの心の残りてこそかくまでも参り来たるなれば、ものの心苦しさをえ見過ぐさで、つひに現れぬること。さらに知られじと思ひつるものを」とて、髪を振りかけて泣くけはひ、ただ、(注9)昔見たまひしもののけのさまと見えたり。

(注8)調ぜられて ――― 「調ず」は、ここでは祈禱によって退散させようとすること。
(注9)昔見たまひしもののけ ――― このもののけは、以前にも光源氏の前に現れていた。

下線部( ア )の解釈として最も適当なものを、次の群のうちから一つ選べ。

( ア )いはけなくより
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  • かわいらしいので
  • 幼いころから
  • 言い表せないほど
  • 他の子よりも

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この過去問の解説 (3件)

01

いはけなし【幼けなし・稚けなし】は「幼い、子供っぽい」という意味の形容詞です。

したがって、(ア)いはけなくよりは「幼いころから」という意味になります。

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02

「いはけなくより」は、
ク活用の「いはけなし」の連用形+「より」です。
「いはけなし」は「幼い」という意味です。
以上のことをふまえて各選択肢を検討していきます。

選択肢1. かわいらしいので

「いはけなし」に「かわいらしい」という意味はありません。
よって不適です。

選択肢2. 幼いころから

幼いという意味なので適当です。

選択肢3. 言い表せないほど

「いはけなし」に「言い表せない」という意味はありません。
よって不適です。

選択肢4. 他の子よりも

「いはけなし」に「他の子」という意味はありません。
よって不適です。

まとめ

語句の意味が分かるかどうかが重要な問題です。

参考になった数0

03

「いはけなし」は「幼けなし、稚けなし」と書くように、幼い、子供っぽい、あどけないの意味です。基本的な古文単語の一つですので、これを覚えていればすぐ答えは選べるかとは思いますが、もう一つ別のところに注目すれば、「〜より」は現代語の「〜から」にあたります。

これらを踏まえて考えれば、「幼いころから」が正解です。

選択肢1. かわいらしいので

現代語で可愛らしいという意味になる古語は、「かなし」や「うつくし」などです。また、「〜ので」と訳す部分もないので、この選択肢は誤りです。

選択肢3. 言い表せないほど

言い表せないの古語は「言ふもおろかなり」などで誤りです。

選択肢4. 他の子よりも

子供というところから、もしかしたら「いはけなし」の幼いという訳と記憶が混濁してしまったかもしれませんが、誤りとなります。

まとめ

助詞の部分からもある程度判断できますが、やはり確実に覚えておきたいレベルの単語の問題ですので、自信を持って選べなかった場合は今一度単語の復習などをするのが良いでしょう。

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