大学入学共通テスト(国語) 過去問
令和7年度(2025年度)本試験
問27 (第4問(古文) 問5)
問題文
【文章Ⅰ】
右大臣の娘である大君(おおいぎみ)は、夫である左大臣の子を妊娠している。一方、右大臣の妹である女君は、かつて契りを交わした左大臣との関係が途絶え、苦悩を深めていた。そのころ、大君が病になり命が危うくなったため、僧が呼ばれて祈禱(きとう)をすることになった。
(注1)山の座主(ざす)、慌て参りたまへり。御枕上に呼び入れきこえて、右の大臣(おとど)、御手をすりて、仏にもの申すやうに、「ただ、いまひとたび、目を見合はせたまへ。あまたはべる中に、何の契りにか、(ア)いはけなくよりたぐひなく思ひそめはべりにし(注2)闇を、さらに(注3)晴るけはべらぬ」と、泣きまどひたまふに、いと静かに数珠(ずず)押し揉(も)みたまひて、「令百由旬内(りゃうひゃくゆじゅんない)、無諸衰患(むしょすいぐゑん)」と読みaたまへる御声、はるかに澄みのぼる心地するに、変はりゆく御けしき、いささか直りて、目をわづかに見開(あ)けたまへり。あるかぎり、(イ)なかなか(注5)手まどひをして、「誦経(ずきゃう)よ、何よ」とまどひたまふに、なほ心ある人とも見えず、御かたちも変はりたるやうにて、その人とも見えたまはず。いとにほひやかにけ近きものから、妬(ねた)げなるまみのけしき、左の大臣はさやうにも分(わ)きたまはず、父殿ぞ、いとあやしう、「思ひかけぬ人にも似たまへるかな」と心得ず思(おぼ)さるるに、うちみじろきて、
さまざまに朝夕こがす胸のうちをいづれのかたにしばし晴るけむ
とのたまふけはひ、いささかその人にもあらず、違(たが)ふべくもあらぬを、父大臣のみぞ、かへすがへす「あやし」と傾(かたぶ)かれたまふ。
さて、わが御心おはせねば、また消え入りつつ、さらにとまるべくもおはせぬを、「今はけしうbおはせじ」とおし静めつつ、いたく嗄(か)れたる御声やめて、薬師(やくし)の呪(ず)をかへすがへす読みたまふに、御もののけ現れ出(い)でて、小さき童(わらは)に(注7)駆り移されぬ。
(ウ)呼ばひののしる声に、今ぞ御心出で来るにや、人々のまもりcきこゆるを、「はしたなし」と思して御衣(ぞ)を引きふたぎたまふ。
(注1)山の座主 ――― 比叡山延暦寺(ひえいざんえんりゃくじ)の最高位にある僧。
(注2)闇 ――― 子を思うあまりに分別を失う親心のたとえ。「人の親の心は闇にあらねども子を思ふ道にまどひぬるかな」(『後撰(ごせん)和歌集』)による。
(注3)晴るけ ――― 下二段活用動詞「晴るく」の連用形。
(注4)令百由旬内、無諸衰患 ――― 『法華経(ほけきょう)』の一節。周囲から衰えや患いをなくすという内容。
(注5)手まどひ ――― 慌てふためく様子。
(注6)薬師の呪 ――― 薬師如来の力によって病気を治す呪文。
(注7)駆り移されぬ ――― 「駆り移す」は、もののけを病人から離して他の人に乗り移らせること。
【文章Ⅱ】
光源氏(本文では「院」)は、病になり生死の境をさまよう妻を救おうとしている。その病には、かつての光源氏の恋人であり、今は亡き女性が関わっていた。
院も、「ただ、いまひとたび、目を見合はせたまへ。いとあへなく限りなりつらむほどをだにえ見ずなりにけることの悔しく悲しきを」と思しまどへるさま、とまりたまふべきにもあらぬを見たてまつる心地ども、ただ推しはかるべし。いみじき御心のうちを仏も見たてまつりたまふにや、月ごろさらに現れ出で来(こ)ぬもののけ、小さき童に移りて呼ばひののしるほどに、やうやう生き出でたまふに、うれしくもゆゆしくも思し騒がる。
いみじく(注8)調(てう)ぜられて、「人はみな去りね。院一(ひと)ところの御耳に聞こえむ。おのれを、月ごろ、調じわびさせたまふが情けなくつらければ、同じくは思し知らせむと思ひつれど、さすがに命もたふまじく身をくだきて思しまどふを見たてまつれば、今こそかくいみじき身を受けたれ、いにしへの心の残りてこそかくまでも参り来たるなれば、ものの心苦しさをえ見過ぐさで、つひに現れぬること。さらに知られじと思ひつるものを」とて、髪を振りかけて泣くけはひ、ただ、(注9)昔見たまひしもののけのさまと見えたり。
(注8)調ぜられて ――― 「調ず」は、ここでは祈禱によって退散させようとすること。
(注9)昔見たまひしもののけ ――― このもののけは、以前にも光源氏の前に現れていた。
Aさんのクラスでは【文章Ⅰ】を読んだ後、それが【文章Ⅱ】の影響を受けて作られたことを学んだ。次に示すのは、二つの文章の共通点と相違点について、生徒たちがグループ内で話し合っている授業の様子である。これを読み、後の問いに答えよ。
生徒A:【文章Ⅰ】も【文章Ⅱ】も、もののけとそれに苦しめられている女性が登場しています。他に、「ただ、いまひとたび、目を見合はせたまへ」という言葉の一致など、表現が共通している点も見られます。
生徒B:そうですね。それに、「小さき童」が登場している点も共通しています。病の原因であるもののけを「小さき童」に移すことで、病人を治療する方法があったようですよ。
生徒C:たしかに多くの共通点がありますね。次に、【文章Ⅰ】と【文章Ⅱ】の相違点についても考えてみましょう。
生徒D:【文章Ⅱ】では、童に移されたもののけが( X )と言っています。
生徒E:自分の思いを伝えようとしているのですね。では、【文章Ⅰ】のもののけはどのような行動をとっているでしょうか。
生徒A:もののけは和歌を詠んでいるのではないですか。
生徒B:あれ、この和歌は「目をわづかに見開け」た大君が詠んだものではないのですか。
生徒C:和歌の表現から考えてみませんか。「朝夕こがす胸のうち」や「いづれのかたにしばし晴るけむ」とありますよ。だから、これは( Y )と考えられます。
生徒D:なるほど、そのとおりですね。和歌の前後も考え合わせると、【文章Ⅰ】では、( Z )。
生徒E:【文章Ⅱ】に比べると、【文章Ⅰ】ではもののけをめぐる状況がずいぶん違っていますね。【文章Ⅰ】は過去の作品を取り入れながらも、独自の場面を作り出したと言えそうです。
空欄( X )に入る発言として最も適当なものを、次のうちから一つ選べ。
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問題
大学入学共通テスト(国語)試験 令和7年度(2025年度)本試験 問27(第4問(古文) 問5) (訂正依頼・報告はこちら)
【文章Ⅰ】
右大臣の娘である大君(おおいぎみ)は、夫である左大臣の子を妊娠している。一方、右大臣の妹である女君は、かつて契りを交わした左大臣との関係が途絶え、苦悩を深めていた。そのころ、大君が病になり命が危うくなったため、僧が呼ばれて祈禱(きとう)をすることになった。
(注1)山の座主(ざす)、慌て参りたまへり。御枕上に呼び入れきこえて、右の大臣(おとど)、御手をすりて、仏にもの申すやうに、「ただ、いまひとたび、目を見合はせたまへ。あまたはべる中に、何の契りにか、(ア)いはけなくよりたぐひなく思ひそめはべりにし(注2)闇を、さらに(注3)晴るけはべらぬ」と、泣きまどひたまふに、いと静かに数珠(ずず)押し揉(も)みたまひて、「令百由旬内(りゃうひゃくゆじゅんない)、無諸衰患(むしょすいぐゑん)」と読みaたまへる御声、はるかに澄みのぼる心地するに、変はりゆく御けしき、いささか直りて、目をわづかに見開(あ)けたまへり。あるかぎり、(イ)なかなか(注5)手まどひをして、「誦経(ずきゃう)よ、何よ」とまどひたまふに、なほ心ある人とも見えず、御かたちも変はりたるやうにて、その人とも見えたまはず。いとにほひやかにけ近きものから、妬(ねた)げなるまみのけしき、左の大臣はさやうにも分(わ)きたまはず、父殿ぞ、いとあやしう、「思ひかけぬ人にも似たまへるかな」と心得ず思(おぼ)さるるに、うちみじろきて、
さまざまに朝夕こがす胸のうちをいづれのかたにしばし晴るけむ
とのたまふけはひ、いささかその人にもあらず、違(たが)ふべくもあらぬを、父大臣のみぞ、かへすがへす「あやし」と傾(かたぶ)かれたまふ。
さて、わが御心おはせねば、また消え入りつつ、さらにとまるべくもおはせぬを、「今はけしうbおはせじ」とおし静めつつ、いたく嗄(か)れたる御声やめて、薬師(やくし)の呪(ず)をかへすがへす読みたまふに、御もののけ現れ出(い)でて、小さき童(わらは)に(注7)駆り移されぬ。
(ウ)呼ばひののしる声に、今ぞ御心出で来るにや、人々のまもりcきこゆるを、「はしたなし」と思して御衣(ぞ)を引きふたぎたまふ。
(注1)山の座主 ――― 比叡山延暦寺(ひえいざんえんりゃくじ)の最高位にある僧。
(注2)闇 ――― 子を思うあまりに分別を失う親心のたとえ。「人の親の心は闇にあらねども子を思ふ道にまどひぬるかな」(『後撰(ごせん)和歌集』)による。
(注3)晴るけ ――― 下二段活用動詞「晴るく」の連用形。
(注4)令百由旬内、無諸衰患 ――― 『法華経(ほけきょう)』の一節。周囲から衰えや患いをなくすという内容。
(注5)手まどひ ――― 慌てふためく様子。
(注6)薬師の呪 ――― 薬師如来の力によって病気を治す呪文。
(注7)駆り移されぬ ――― 「駆り移す」は、もののけを病人から離して他の人に乗り移らせること。
【文章Ⅱ】
光源氏(本文では「院」)は、病になり生死の境をさまよう妻を救おうとしている。その病には、かつての光源氏の恋人であり、今は亡き女性が関わっていた。
院も、「ただ、いまひとたび、目を見合はせたまへ。いとあへなく限りなりつらむほどをだにえ見ずなりにけることの悔しく悲しきを」と思しまどへるさま、とまりたまふべきにもあらぬを見たてまつる心地ども、ただ推しはかるべし。いみじき御心のうちを仏も見たてまつりたまふにや、月ごろさらに現れ出で来(こ)ぬもののけ、小さき童に移りて呼ばひののしるほどに、やうやう生き出でたまふに、うれしくもゆゆしくも思し騒がる。
いみじく(注8)調(てう)ぜられて、「人はみな去りね。院一(ひと)ところの御耳に聞こえむ。おのれを、月ごろ、調じわびさせたまふが情けなくつらければ、同じくは思し知らせむと思ひつれど、さすがに命もたふまじく身をくだきて思しまどふを見たてまつれば、今こそかくいみじき身を受けたれ、いにしへの心の残りてこそかくまでも参り来たるなれば、ものの心苦しさをえ見過ぐさで、つひに現れぬること。さらに知られじと思ひつるものを」とて、髪を振りかけて泣くけはひ、ただ、(注9)昔見たまひしもののけのさまと見えたり。
(注8)調ぜられて ――― 「調ず」は、ここでは祈禱によって退散させようとすること。
(注9)昔見たまひしもののけ ――― このもののけは、以前にも光源氏の前に現れていた。
Aさんのクラスでは【文章Ⅰ】を読んだ後、それが【文章Ⅱ】の影響を受けて作られたことを学んだ。次に示すのは、二つの文章の共通点と相違点について、生徒たちがグループ内で話し合っている授業の様子である。これを読み、後の問いに答えよ。
生徒A:【文章Ⅰ】も【文章Ⅱ】も、もののけとそれに苦しめられている女性が登場しています。他に、「ただ、いまひとたび、目を見合はせたまへ」という言葉の一致など、表現が共通している点も見られます。
生徒B:そうですね。それに、「小さき童」が登場している点も共通しています。病の原因であるもののけを「小さき童」に移すことで、病人を治療する方法があったようですよ。
生徒C:たしかに多くの共通点がありますね。次に、【文章Ⅰ】と【文章Ⅱ】の相違点についても考えてみましょう。
生徒D:【文章Ⅱ】では、童に移されたもののけが( X )と言っています。
生徒E:自分の思いを伝えようとしているのですね。では、【文章Ⅰ】のもののけはどのような行動をとっているでしょうか。
生徒A:もののけは和歌を詠んでいるのではないですか。
生徒B:あれ、この和歌は「目をわづかに見開け」た大君が詠んだものではないのですか。
生徒C:和歌の表現から考えてみませんか。「朝夕こがす胸のうち」や「いづれのかたにしばし晴るけむ」とありますよ。だから、これは( Y )と考えられます。
生徒D:なるほど、そのとおりですね。和歌の前後も考え合わせると、【文章Ⅰ】では、( Z )。
生徒E:【文章Ⅱ】に比べると、【文章Ⅰ】ではもののけをめぐる状況がずいぶん違っていますね。【文章Ⅰ】は過去の作品を取り入れながらも、独自の場面を作り出したと言えそうです。
空欄( X )に入る発言として最も適当なものを、次のうちから一つ選べ。
- まわりの者がみな自分を恐れて去ってしまったので、せめて光源氏には反省している気持ちを分かってもらいたくてこうして姿を現したのだ
- 妻のために自分に謝ろうとする光源氏を憎らしく思うのに、それでも光源氏への愛情は昔のままであることを知らせたくてここに来てしまった
- 光源氏の妻がこのまま死んでしまいそうなほど苦しんでいる様子を間近で見たいので、長年続く恨みの心を持ったままここにやって来たのだ
- 自分がもののけとなって取りついていることは知られたくなかったのに、光源氏のいたわしい姿を見過ごすことができずに姿を現してしまった
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この過去問の解説 (3件)
01
【文章Ⅱ】で話しているタイミングは2回あります。
最初の台詞は院が話していることが分かるので、
童に移されたもののけが話しているのは2つ目の台詞です。
以上のことをふまえて各選択肢を検討していきます。
「自分を恐れて去ってしまった」という意味の文章はありません。
よって不適です。
「妻のために自分に謝ろうとする光源氏」を見てと書かれている部分は、
本文では「命もたふまじく身をくだきて思しまどふを見たてまつれば」と書かれています。
その後の文章に憎らしく思うという意味の文章がないため不適です。
姿を現した理由として、
本文では「いにしへの心の残りてこそかくまでも参り来たるなれば、ものの心苦しさをえ見過ぐさで、つひに現れぬること」とあり、
「いにしへの心」は「長年続く恨みの心」を意味する文章ではありません。
適当な選択肢です。
「自分がもののけとなって取りついていることは知られたくなかったのに」は、
本文の「さらに知られじと思ひつるものを」という部分を意味します。
「光源氏のいたわしい姿を見過ごすことができずに姿を現してしまった」という部分は、
本文の「命もたふまじく身をくだきて思しまどふを見たてまつれば、今こそかくいみじき身を受けたれ、いにしへの心の残りてこそかくまでも参り来たるなれば、ものの心苦しさをえ見過ぐさで、つひに現れぬること。」という記述と一致します。
選択肢の内容が本文に書かれているかに注目すると解きやすい問題でした。
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02
読むべきは文章Ⅱの「おのれを、月ごろ、調じわびさせたまふが情けなくつらければ、同じくは思し知らせむと思ひつれど、さすがに命もたふまじく身をくだきて思しまどふを見たてまつれば、今こそかくいみじき身を受けたれ、いにしへの心の残りてこそかくまでも参り来たるなれば、ものの心苦しさをえ見過ぐさで、つひに現れぬること。さらに知られじと思ひつるものを」です。これを逐語訳できればすぐに解けますが、現実的には難しいという方も多いかと思います。
そこで、最低限、ここだけ分かれば解けるという点を一つ挙げるとすれば、「さすがに命もたふまじく身をくだきて思しまどふを見たてまつれば」の部分が良いかと思います。特に「思しまどふ」は尊敬語で「見たてまつれば」は謙譲語ですから、どちらもこれは院(=光源氏)に対する敬意となります。となると、ここで喋っているのは「もののけ」となり、主語・補語が確定できるのではないでしょうか。
それを踏まえて簡単に訳せば「そうは言っても、命も耐えられないようなほどに身をくだいて(光源氏が)お思い迷いなさるのを見申し上げたので」となりますので、この訳に最も近い理由を述べているのは「自分がもののけとなって取りついていることは知られたくなかったのに、光源氏のいたわしい姿を見過ごすことができずに姿を現してしまった」となります。よってこれが正解です。
「人はみな去りね。院一ところの御耳に聞こえむ」とあり、人がいない旨は書かれていますが、それを好機に「光源氏お一人の耳に申し上げよう」と言っていて、自分を恐れて去ってしまったという意味は書いていません。よって誤りです。
「光源氏への愛情は昔のままであることを知らせたくて」という部分は特に本文中には書いていません。よって不適です。
「このまま死んでしまいそうなほど苦しんでいる様子を間近で見たい」も「長年続く恨みの心を持ったまま」も本文にないため誤りです。
選択肢が本文の逐語訳というよりは、内容をまとめた意訳に近いものになっているためにやや選びづらかった向きもあるかもしれません。しかし、直訳・逐語訳をすれば意訳で明らかにおかしい所は気付けますし、また全てを訳さなくとも、意訳ですので一部の訳からでもニュアンスを汲み取って正誤判定できる場合もあります。諦めずに直訳をしてみましょう。また直訳の出来る箇所を一箇所でも増やしていきましょう。
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03
空欄(X)に当てはまる発言を選ぶためには、
「人はみな去りね。院一(ひと)ところの御耳に聞こえむ。おのれを、月ごろ、調じわびさせたまふが情けなくつらければ、同じくは思し知らせむと思ひつれど、さすがに命もたふまじく身をくだきて思しまどふを見たてまつれば、今こそかくいみじき身を受けたれ、いにしへの心の残りてこそかくまでも参り来たるなれば、ものの心苦しさをえ見過ぐさで、つひに現れぬること。さらに知られじと思ひつるものを」
上記の部分を参照する必要がありますが、特に、「いにしへの心の残りてこそかくまでも参り来たるなれば、ものの心苦しさをえ見過ぐさで、つひに現れぬること。さらに知られじと思ひつるものを」(訳:かつての想いが残っているからこそ、こうまでして参上したのだから、あなたの心が辛そうな様子を見過ごすことができず、とうとう姿を現してしまったのです。決して知られまいと思っていたのに)の部分が重要となります。
したがって、「自分がもののけとなって取りついていることは知られたくなかったのに、光源氏のいたわしい姿を見過ごすことができずに姿を現してしまった」という解釈が正解です。
童の体に乗り移った、もののけの語りがヒントとなります。
該当する箇所は3文から成る長い会話文ですが、一語一語を正確に訳す必要は無く、選択肢の正誤判断に必要な最低限の部分さえ読み取れれば正解を導き出すことは可能です。
文章を一読して全く読解の糸口がつかめなかった人は、尊敬語と謙譲語の使い分けに着目することで、まずはヒントとなる範囲内のそれぞれの文章が「(もののけの視点で)光源氏について語っている文」、「もののけが自分自身のことを語っている文」のどちらなのか見極めてみましょう。
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