共通テスト(国語) 過去問
令和8年度(2026年度)本試験
問25 (第4問(古文) 問3)

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問題

共通テスト(国語)試験 令和8年度(2026年度)本試験 問25(第4問(古文) 問3) (訂正依頼・報告はこちら)

次の文章は、『うつほ物語』の一節である。仲忠(なかただ)(本文では「中納言」「君」)は、祖父が異国で天人たちより伝授された琴(きん)とその奏法を、母(本文では「尚侍(かん)のおとど」)とともに大切に守り伝えてきた「琴の一族」である。本文は、仲忠の妻(本文では「宮」)が娘(本文では「いぬ」「児(ちご)」)を出産した直後の場面である。これを読んで、後の問いに答えよ。なお、設問の都合で一部本文を省いたところがある。また、本文の段落番号を付してある。

[1]中納言、「かの(注1)龍角(りうかく)は、賜(たま)はりて、いぬの守(まぼ)りにしはべらむ」。尚侍のおとど、うち笑ひて、「いつしかとも、はた。さても、かやうの折には言ふやうかある」とのたまへば、「おほかたのことは、いかがはべらむ。この琴の族(ぞう)ある所、(注2)声する所には、天人の翔(かけ)りて聞きたまふなれば、添へたらむとてa 聞こゆるなり」。尚侍のおとど、(注3)典侍(ないしのすけ)して、(注4)大将のおとどに、「かの、おのが琴、ここに要(えう)ぜらるめり。b 取らせむ」と聞こえたまへれば、急ぎて(注5) 三条殿に渡りたまひて、取らせておはしたり。
[2](注6)三の宮、取りたまひて、中納言にさし遣(や)りたまひつれば、唐(から)の縫ひ物の袋に入れたり。児を懐に入れながら、琴を取り出(い)でたまひて、「年ごろ、この(注7)手をc いかにしはべらむと思ひたまへ嘆きつるを。後(のち)は知らねど」などて、(注8) はうしやうといふ手を、はなやかに弾く。声、いと誇りかににぎははしきものから、また、あはれにすごし。よろづの物の音(ね)多く、琴の調べ合はせたる声、向かひて聞くよりも、遠くて響きたり。
[3]中納言、(注9)かかるべき曲(ごく)を、音高く弾くに、風いと声荒く吹く。空のけしき騒がしげなれば、「(注10)例の、物、手触れにくきぞかし。わづらはし」と思ひて、弾きやみて、尚侍のおとどに申したまふ。「今、曲一つ仕うまつらむとすれど、(ア)騒がしければ、えなむ。これに御手一つ遊ばして、鬼逃がさせたまへ」と聞こえたまへば、「(イ)はしたなげにぞあめる」。君、「仲忠がためには、これにまさる折なむはべるまじき」と聞こえたまへば、尚侍のおとど、(注11)御床(ゆか)より下りたまひて、琴を取りたまひて、曲一つ弾きたまふ。その音、さらに言ふ限りなし。中納言の御手は、おもしろく(注12)凝(こご)しきまで、雲風のけしき、色殊なるを、この御手は、病ある者、思ひ怖(お)ぢ、うらぶれたる人も、これを聞けば皆忘れて、おもしろく頼もしく、齢栄(よはひさか)ゆる心地す。かかれば、宮は、御琴を聞こしめしつれば、ただにおはしつるよりも若やかに、わざをしつるとも思(おぼ)されず、苦しきこともなくて起き居たまへり。中納言の君、「悪(あ)しかめり。なほd 臥(ふ)させたまひて聞こしめせ」と申したまへば、宮、「ただ今は苦しうもあらず。この御琴を聞きつれば、苦しかりつるも、皆やみぬ」とて居たまへり。(注13)女御(にょうご)の君・尚侍のおとど、「(ウ)風邪ひきたまひてむ」とて、騒ぎ臥せたてまつりたまひつ。琴は、弾き果てたまへれば、袋に入れて、宮の御枕上に、(注14)御佩刀(みはかし)添へて置きつ。

(注1)龍角 ―― 仲忠の祖父から尚侍のおとどに受け継がれた琴の一つ。
(注2)声する所には、天人の翔りて聞きたまふなれば ―― かつて仲忠の祖父が天人から「特別な琴の音色が聞こえるところに訪れよう」という予言を授けられたことをふまえての発言。
(注3)典侍 ―― 女官の一人。
(注4)大将のおとど ―― 仲忠の父。
(注5)三条殿 ―― 尚侍のおとどと大将のおとど夫婦の邸宅。
(注6)三の宮 ―― 宮の兄弟。
(注7)手 ―― ここでは琴の奏法のこと。
(注8)はうしやう ―― 琴の曲名。
(注9)かかるべき曲 ―― 子の誕生に際して弾くのにふさわしい曲。
(注10)例の、物、手触れにくきぞかし ―― 以前、仲忠が琴を演奏した折に、天変地異などの不思議な現象が起きたことをふまえての発言。
(注11)御床 ―― ここでは、御帳台(みちょうだい)(貴人の寝台)の台座のこと。尚侍のおとどは、宮の出産を手伝うために御帳台の内にいた。
(注12)凝しきまで ―― 「凝し」は、険しいの意。
(注13)女御の君 ―― 宮の母。
(注14)御佩刀 ―― ここでは守り刀のこと。

【人物関係図】「*」印を付した人物は後の設問に登場する。

下線部(ウ)の解釈として最も適当なものを、次のうちから一つ選べ。

(ウ) 風邪ひきたまひてむ
  • 風邪をおひきになるかもしれません
  • 風邪をひかせ申し上げるわけにはいきません
  • 風邪をひかせ申し上げてしまったようです
  • 風邪をおひきになってしまうでしょう

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