共通テスト(国語) 過去問
令和8年度(2026年度)本試験
問29 (第4問(古文) 問7)

このページは閲覧用ページです。
履歴を残すには、 「新しく出題する(ここをクリック)」 をご利用ください。

問題

共通テスト(国語)試験 令和8年度(2026年度)本試験 問29(第4問(古文) 問7) (訂正依頼・報告はこちら)

次の文章は、『うつほ物語』の一節である。仲忠(なかただ)(本文では「中納言」「君」)は、祖父が異国で天人たちより伝授された琴(きん)とその奏法を、母(本文では「尚侍(かん)のおとど」)とともに大切に守り伝えてきた「琴の一族」である。本文は、仲忠の妻(本文では「宮」)が娘(本文では「いぬ」「児(ちご)」)を出産した直後の場面である。これを読んで、後の問いに答えよ。なお、設問の都合で一部本文を省いたところがある。また、本文の段落番号を付してある。

[1]中納言、「かの(注1)龍角(りうかく)は、賜(たま)はりて、いぬの守(まぼ)りにしはべらむ」。尚侍のおとど、うち笑ひて、「いつしかとも、はた。さても、かやうの折には言ふやうかある」とのたまへば、「おほかたのことは、いかがはべらむ。この琴の族(ぞう)ある所、(注2)声する所には、天人の翔(かけ)りて聞きたまふなれば、添へたらむとてa 聞こゆるなり」。尚侍のおとど、(注3)典侍(ないしのすけ)して、(注4)大将のおとどに、「かの、おのが琴、ここに要(えう)ぜらるめり。b 取らせむ」と聞こえたまへれば、急ぎて(注5) 三条殿に渡りたまひて、取らせておはしたり。
[2](注6)三の宮、取りたまひて、中納言にさし遣(や)りたまひつれば、唐(から)の縫ひ物の袋に入れたり。児を懐に入れながら、琴を取り出(い)でたまひて、「年ごろ、この(注7)手をc いかにしはべらむと思ひたまへ嘆きつるを。後(のち)は知らねど」などて、(注8) はうしやうといふ手を、はなやかに弾く。声、いと誇りかににぎははしきものから、また、あはれにすごし。よろづの物の音(ね)多く、琴の調べ合はせたる声、向かひて聞くよりも、遠くて響きたり。
[3]中納言、(注9)かかるべき曲(ごく)を、音高く弾くに、風いと声荒く吹く。空のけしき騒がしげなれば、「(注10)例の、物、手触れにくきぞかし。わづらはし」と思ひて、弾きやみて、尚侍のおとどに申したまふ。「今、曲一つ仕うまつらむとすれど、(ア)騒がしければ、えなむ。これに御手一つ遊ばして、鬼逃がさせたまへ」と聞こえたまへば、「(イ)はしたなげにぞあめる」。君、「仲忠がためには、これにまさる折なむはべるまじき」と聞こえたまへば、尚侍のおとど、(注11)御床(ゆか)より下りたまひて、琴を取りたまひて、曲一つ弾きたまふ。その音、さらに言ふ限りなし。中納言の御手は、おもしろく(注12)凝(こご)しきまで、雲風のけしき、色殊なるを、この御手は、病ある者、思ひ怖(お)ぢ、うらぶれたる人も、これを聞けば皆忘れて、おもしろく頼もしく、齢栄(よはひさか)ゆる心地す。かかれば、宮は、御琴を聞こしめしつれば、ただにおはしつるよりも若やかに、わざをしつるとも思(おぼ)されず、苦しきこともなくて起き居たまへり。中納言の君、「悪(あ)しかめり。なほd 臥(ふ)させたまひて聞こしめせ」と申したまへば、宮、「ただ今は苦しうもあらず。この御琴を聞きつれば、苦しかりつるも、皆やみぬ」とて居たまへり。(注13)女御(にょうご)の君・尚侍のおとど、「(ウ)風邪ひきたまひてむ」とて、騒ぎ臥せたてまつりたまひつ。琴は、弾き果てたまへれば、袋に入れて、宮の御枕上に、(注14)御佩刀(みはかし)添へて置きつ。

(注1)龍角 ―― 仲忠の祖父から尚侍のおとどに受け継がれた琴の一つ。
(注2)声する所には、天人の翔りて聞きたまふなれば ―― かつて仲忠の祖父が天人から「特別な琴の音色が聞こえるところに訪れよう」という予言を授けられたことをふまえての発言。
(注3)典侍 ―― 女官の一人。
(注4)大将のおとど ―― 仲忠の父。
(注5)三条殿 ―― 尚侍のおとどと大将のおとど夫婦の邸宅。
(注6)三の宮 ―― 宮の兄弟。
(注7)手 ―― ここでは琴の奏法のこと。
(注8)はうしやう ―― 琴の曲名。
(注9)かかるべき曲 ―― 子の誕生に際して弾くのにふさわしい曲。
(注10)例の、物、手触れにくきぞかし ―― 以前、仲忠が琴を演奏した折に、天変地異などの不思議な現象が起きたことをふまえての発言。
(注11)御床 ―― ここでは、御帳台(みちょうだい)(貴人の寝台)の台座のこと。尚侍のおとどは、宮の出産を手伝うために御帳台の内にいた。
(注12)凝しきまで ―― 「凝し」は、険しいの意。
(注13)女御の君 ―― 宮の母。
(注14)御佩刀 ―― ここでは守り刀のこと。

【人物関係図】「*」印を付した人物は本設問に登場する。

次に示すのは、本文の場面に居合わせた右大臣が、後日、帝にその折のことを報告している際の会話である。これを読んで、この会話と本文に関する説明として最も適当なものを、後の選択肢のうちから一つ選べ。

(右大臣)「(注)尚侍(ないしのかみ)など琴弾きはべりしほどなむ、興(きょう)はべりしや。いとありがたかりけることぞや」
(帝)「その琴は、いづれぞ」
(右大臣)「尚侍の、昔より弾きはべりける龍角となむ承りし。それをなむ、かの児になむ取らせはべりにける」
(帝)「いといみじきもの得たりける女子(をんなご)にもあるかな」
  (注)尚侍 ―― 本文の「尚侍のおとど」(仲忠の母)のこと。
  • この会話で「いとありがたかりけることぞや」と詠嘆の助詞「や」を用いている点からは、尚侍のおとどが琴を弾くのは稀(まれ)なことだと分かるが、本文でも尚侍のおとどは琴の一族以外の人の前で演奏することを最初は拒んでいた。
  • この会話での「その琴は、いづれぞ」との帝の問いからは、仲忠一族の琴の伝授が他の人にとっても関心の的であったことが分かるが、本文でも仲忠の後継者が長年不在であったことに対する世間の嘆きの声が記されていた。
  • この会話での「尚侍の、昔より弾きはべりける龍角」との右大臣の説明からは、龍角は尚侍のおとどが幼い仲忠とともに弾いた思い出の楽器であることが分かるが、本文でも仲忠は龍角の演奏を聞いて幼少時を思い出していた。
  • この会話で「それをなむ、かの児になむ」と強意の助詞「なむ」を繰り返す点からは、龍角を誕生直後のいぬに与えるのは特別なことだと分かるが、本文でも仲忠はいぬに授けられた龍角を早速いぬを抱きながら演奏していた。
  • この会話での「いといみじきもの得たりける女子にもあるかな」との帝の発言からは、尚侍のおとどが並外れた琴の奏法を持ち合わせていることが分かるが、本文でも尚侍のおとどの演奏が仲忠の演奏以上に賞賛されていた。

正解!素晴らしいです

残念...

この過去問の解説

まだ、解説がありません。