共通テスト(国語) 過去問
令和8年度(2026年度)追・再試験
問30 (第4問(古文) 問5)

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問題

共通テスト(国語)試験 令和8年度(2026年度)追・再試験 問30(第4問(古文) 問5) (訂正依頼・報告はこちら)

次の文章A〜Cはそれぞれ、室町時代の歌人である正徹(しょうてつ)の『正徹物語』のうち、歌の詠み方について述べた箇所である。これらを読んで、後の問いに答えよ。

A  初心のほどは、さのみくひほり入りて(注1)案ぜずとも、颯々(さつさつ)と(注2)やすく詠みならふべきなり。いかに骨を折りたれども、位さだまりたれば、上から見れば(ア)さしたることもなきなり。いかに案じたりとも、我が位ほどなる歌ならでは出(い)で来ぬものなり。
ある人の歌三首に二首は本歌を取る(注3)様(やう)に詠めることわろし。上古(注4)も本歌を取ることをば大事にして候(さぶら)ふ。上手の位になりて、恋・雑(ざふ)を季になし(注5)、季を恋・雑に取りなし、句の置き所をかへなどして、心を別のものに詠みなしけるなり。初心の時、本歌を取れば、わづかに句の置き所をかへたれども、心は同じものなり。されば初心にて本歌を取ること、斟酌(しんしゃく)(注6)あるべきことなり。
B  得たる者の歌は、何事をいひ出でたるも、一ふしの興ありて面白きなり。初心の者これを見て、心にうらやましく思ひて、詠み似せむとすれば、無心所着(むしんしょぢゃく)(注7)の何ともなくほれたること(注8)を詠み出だすなり。「これは(イ)何をあそばし候ふぞ」と人が尋ぬれば、「我もえ知らず」といひて、たはごとを詠むなり。よくよく慎むべきことなり。初心の時は、ただうちむかひて、一首がさはさはと理(ことわり)のきこゆるやうに詠むべきなり。その位にも至らずして、達者のまねをすれば、をかしきこと出で来るなり。
C  了俊(れうしゅん)(注9)常に申されしは、「我、若年の頃、連歌(注10)を稽古し侍(はべ)りしに、よくもなき句を多くせむよりは、五句三句なりとも、我が本意の連歌をすべしと思ひて、句数を少なく申し侍りしを、摂政殿(注11)きこしめして、了俊の状をささげられし時、その状の奥を引きかへして(注12)、『御辺(ごへん)(注13)のこの間よき連歌をすべしとて、句数少なくせらるるよし聞き侍り。しかるべからざることなり。一句二句をみがきて、随分よき連歌と存ずれども、上の人の目から見れば、まだ初心の田地(でんち)(注14)にて、さらによき句にてはなきなり。されば初心のほどは、いかにも多く口軽(くちがろ)にしもてゆけば、自然(じねん)に上手にもなるなり』とことのほか御折檻(せっかん)(注15)ありし」とて、予がよき歌を詠まむとするとて、文書をして折檻ありしなり。
常には摂政殿の御諚(ごぢゃう)(注16)を申し出だして、「これが(ウ)いかめしき御恩なり」と申されけり。

(注1)くひほり入りて —— 深く掘り下げて。
(注2)颯々と —————— あっさりと。
(注3)本歌を取る ———— 先人の歌をもとにして別の新しい歌を作ること。本歌取り。「本歌」はそのもとの歌。
(注4)上古 ——————— ここでは平安時代以前のこと。
(注5)恋・雑を季になし —— 「恋」「雑」「季」は和歌集における内容分類。「季」は春・夏・秋・冬。
(注6)斟酌 ———————— ここでは差し控えること。
(注7)無心所着 —————— 歌論の用語で、一首の意味が通らないこと。
(注8)ほれたること ———— ぼやけたこと。
(注9)了俊 ———————— 今川了俊。正徹の師。
(注10)連歌 ———————— 和歌の上の句(五・七・五)と下の句(七・七)を交互に連ねていく文芸。
(注11)摂政殿 ——————— 二条良基(よしもと)。連歌の大成者。
(注12)その状の奥を引きかへして ——— 了俊が出した書状の余白に摂政殿が返事を書いたということ。
(注13)御辺 ———————— あなた。
(注14)田地 ———————— 境地。
(注15)折檻 ———————— ここでは厳しく叱ること。
(注16)御諚 ———————— 貴人の言葉。仰せ。

文章Cで、了俊が正徹に語った内容に関する説明として最も適当なものを、次の選択肢のうちから一つ選べ。
  • 了俊は若い頃、自分の思いを率直に詠めるように稽古すべきと考え、「句数を少なく申し侍りし」とあるように、連歌の句数を少なくすることを摂政殿に提案した。
  • 了俊が世評にとらわれない独自の連歌を目指していたことに対して、摂政殿は「よき連歌をすべし」と、誰もが認める優れた連歌を作らなければならないと指導した。
  • 了俊の連歌に対する向き合い方について、摂政殿は「しかるべからざることなり」と、少数の良い句を作ろうとする練習方法はあってはならないことだと注意した。
  • 摂政殿は一つの句に技巧を凝らそうとする了俊に、「さらによき句にてはなきなり」とあるように、初心者が熟考しても混乱してますます悪い句になると批判した。
  • 摂政殿は了俊に対して、「いかにも多く口軽にしもてゆけば」とあるように、どんなに句数は増えてもよいので、自分のところに多くの句を持ってくるように命じた。

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