共通テスト(国語) 過去問
令和8年度(2026年度)追・再試験
問29 (第4問(古文) 問4)

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問題

共通テスト(国語)試験 令和8年度(2026年度)追・再試験 問29(第4問(古文) 問4) (訂正依頼・報告はこちら)

次の文章A〜Cはそれぞれ、室町時代の歌人である正徹(しょうてつ)の『正徹物語』のうち、歌の詠み方について述べた箇所である。これらを読んで、後の問いに答えよ。

A  初心のほどは、さのみくひほり入りて(注1)案ぜずとも、颯々(さつさつ)と(注2)やすく詠みならふべきなり。いかに骨を折りたれども、位さだまりたれば、上から見れば(ア)さしたることもなきなり。いかに案じたりとも、我が位ほどなる歌ならでは出(い)で来ぬものなり。
ある人の歌三首に二首は本歌を取る(注3)様(やう)に詠めることわろし。上古(注4)も本歌を取ることをば大事にして候(さぶら)ふ。上手の位になりて、恋・雑(ざふ)を季になし(注5)、季を恋・雑に取りなし、句の置き所をかへなどして、心を別のものに詠みなしけるなり。初心の時、本歌を取れば、わづかに句の置き所をかへたれども、心は同じものなり。されば初心にて本歌を取ること、斟酌(しんしゃく)(注6)あるべきことなり。
B  得たる者の歌は、何事をいひ出でたるも、一ふしの興ありて面白きなり。初心の者これを見て、心にうらやましく思ひて、詠み似せむとすれば、無心所着(むしんしょぢゃく)(注7)の何ともなくほれたること(注8)を詠み出だすなり。「これは(イ)何をあそばし候ふぞ」と人が尋ぬれば、「我もえ知らず」といひて、たはごとを詠むなり。よくよく慎むべきことなり。初心の時は、ただうちむかひて、一首がさはさはと理(ことわり)のきこゆるやうに詠むべきなり。その位にも至らずして、達者のまねをすれば、をかしきこと出で来るなり。
C  了俊(れうしゅん)(注9)常に申されしは、「我、若年の頃、連歌(注10)を稽古し侍(はべ)りしに、よくもなき句を多くせむよりは、五句三句なりとも、我が本意の連歌をすべしと思ひて、句数を少なく申し侍りしを、摂政殿(注11)きこしめして、了俊の状をささげられし時、その状の奥を引きかへして(注12)、『御辺(ごへん)(注13)のこの間よき連歌をすべしとて、句数少なくせらるるよし聞き侍り。しかるべからざることなり。一句二句をみがきて、随分よき連歌と存ずれども、上の人の目から見れば、まだ初心の田地(でんち)(注14)にて、さらによき句にてはなきなり。されば初心のほどは、いかにも多く口軽(くちがろ)にしもてゆけば、自然(じねん)に上手にもなるなり』とことのほか御折檻(せっかん)(注15)ありし」とて、予がよき歌を詠まむとするとて、文書をして折檻ありしなり。
常には摂政殿の御諚(ごぢゃう)(注16)を申し出だして、「これが(ウ)いかめしき御恩なり」と申されけり。

(注1)くひほり入りて —— 深く掘り下げて。
(注2)颯々と —————— あっさりと。
(注3)本歌を取る ———— 先人の歌をもとにして別の新しい歌を作ること。本歌取り。「本歌」はそのもとの歌。
(注4)上古 ——————— ここでは平安時代以前のこと。
(注5)恋・雑を季になし —— 「恋」「雑」「季」は和歌集における内容分類。「季」は春・夏・秋・冬。
(注6)斟酌 ———————— ここでは差し控えること。
(注7)無心所着 —————— 歌論の用語で、一首の意味が通らないこと。
(注8)ほれたること ———— ぼやけたこと。
(注9)了俊 ———————— 今川了俊。正徹の師。
(注10)連歌 ———————— 和歌の上の句(五・七・五)と下の句(七・七)を交互に連ねていく文芸。
(注11)摂政殿 ——————— 二条良基(よしもと)。連歌の大成者。
(注12)その状の奥を引きかへして ——— 了俊が出した書状の余白に摂政殿が返事を書いたということ。
(注13)御辺 ———————— あなた。
(注14)田地 ———————— 境地。
(注15)折檻 ———————— ここでは厳しく叱ること。
(注16)御諚 ———————— 貴人の言葉。仰せ。

文章A・文章Bの内容に関する説明として最も適当なものを、次の選択肢のうちから一つ選べ。
  • 初心者のうちは、いくら努力しても自分の名声を高める優れた和歌を詠み出すことは難しいので、無理をせずに自分の実力に見合った和歌を詠むのがよい。
  • 初心者であっても、時には趣深い和歌を詠むこともあるが、そのような幸運な人の真似(まね)を安易にしようとすると、支離滅裂で意味の通らない和歌になってしまう。
  • 初心者が下手な和歌を詠んでしまったとき、自分でもその理由が分からないなどと開き直るのではなく、達人に向かってきちんと理屈を説明するべきである。
  • 初心者の場合は余計な工夫をしようとはせず、すらすらと筋が通るように和歌を詠むべきであり、達人の域に至っていないのにその模倣をするべきではない。

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